
皆さんは「マイクロプラスチック」という言葉を耳にしたことはありますか。
今,大きさが5ミリに満たない小さなプラスチックが海に大量に漂っています。
この正体は,自然界に捨てられたペットボトルやレジ袋です。紫外線や波のカを受けて浜辺や河口でみるみうちに劣化し,さらに砕かれ小さくなって海に流れ出ています。
今,この非常に小さなプラスチックが,大きな環境問題になろうとしています。
先日,NHKの「ニュースウォッチ9」で「マイクロプラスチック」についての放送がありました。
東京湾に姿を見せたフランスの科学探査船「タラ号」。2003年から世界中を航海しながら地球温暖化が海洋に与える影響などを調査する中で日本に立ち寄りました。
タラ財団のロマン・トゥルブレ事務局長は「汚染は相像以上にひどい。人間のせいで海に流れ出たプラスチックはずっと残留している」と話します。
石油からできているプラスチックは油に溶けやすい有害物質が付着しやすい性質を持っています。魚などがエサと間違えてマイクロプラスチックを食べることで,その有害物質を体内に取り込みます。食物連鎖の過程でこれが繰り返されると,有害物質の濃度が高くなり生態系に影響が出る恐れがあります。
「悲しいことだが,どこへ行ってもプラスチックごみがある。人類すべてに関わる問題であり,皆で解決しなければならない。」
マイクロプラスチックによる汚染の実態は日本でも研究が進められており,東京農工大学 高田 秀重教授は警鐘を鳴らします。
日本の周辺の海にも大量にプラスチックが漂っており,その数は世界の他の海城に比べて20倍から30倍にものぼることが最近の研究でわかってきています。
番組では,東京湾(お台場)の砂に水を入れてかき回すと,色のついた小さな破片が浮き上がる様子を見せていました。その破片の多くがマイクロプラスチックです。
また,3年前に東京湾で釣ったカタクチイワシ64匹のうち49匹,およそ8割の胃の中からマイクロプラスチックが見つかったといいます。
私が一番気になったのは,”この魚を食べても大丈夫か?”。
高田教授は「このサイズのプラスチックは便で出ていってしまうし,付着している有害化学物質も現時点では問題にならない量であるため,この魚を食べるのを控える必要はまったくないと考えている」と話します。
その一方で,「”今後のマイクロプラスチックの汚染がさらに悪化する”という研究結果もあり,このまま放置していると,いつか人の健康にも影響が出かねない」と懸念しています。
レジ袋の使用禁止や有料化など,国レベルで規制している国は今20ヵ国以上になっていますが,日本では国レベルの規制は遅れています。
プラスチックは便利ですが,便利さを追求するだけでは,そのつけを将来の人類に回してしまうことになるのではないでしょうか。